加賀市長の 宮元 陸でございます。
「かがく宇かん」プロジェクトの主宰者として、ご挨拶申し上げます。
「雪は天から送られた手紙である。」
この有名な言葉を残された中谷宇吉郎博士が、昭和37年4月に没されてから、今年で55年が経ち、一つの節目を迎えております。
そのような中、博士の遺した業績が、雪氷学の分野だけにとどまらず、地球環境全般を対象とする、自然科学・芸術・映像といった様々な分野で、ますますその価値と評価を高めてきています。
昨年末から今年にかけては、ラトビアやスウェーデンなどの北欧圏において、博士が記録した科学写真の展示や、セミナーが開催され、大変な好評を博したほか、新たな書籍なども相次いで出版されているようであります。
加賀市では、中谷博士が生誕した地の自治体として、「博士が研究のベースとして持ち続けた“科学の心”を昇華させ、雪の科学館の活性化、子どもたちの教育の充実、更には、加賀市の未来を切り拓くことの実践へとつなげられないか」といったことを、一昨年来、中谷芙二子さんを始め、中谷宇吉郎記念財団の方々と話し合ってまいりました。
そのような中で、博士の研究領域であった「自然科学」、そして造詣が深かった「芸術」の分野における、研究者の研究活動を、この加賀市の地から後押しすることが、“科学の心”を過去から現代、そして未来へと継承させ、新たな果実を実らせ、価値を生み出すことにつながっていくのではないか、との結論に至りました。
本日、立ち上げます「かがく宇かん」プロジェクトは、このような背景や考えから生まれ、新しい研究教育モデルの一つとして実践していくものであります。
現在、第4次産業革命とも呼ぶべき、IoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能による技術革新は、従来にないスピードとインパクトで進行しています。
そのような中、これからの教育で強化されるべきものは、「科学・サイエンス」、「技術・テクノロジー」、「工学・エンジニアリング」、 「数学・マセマティックス」、これらの頭文字をとった「STEM教育」であると言われ、更に、近頃では、人の感性に訴える、「芸術・ART」の要素が加わってきております。
このような状況を捉えてみましても、自然科学と芸術をテーマとする「かがく宇かん」プロジェクトが成果を生み、それを伝えていくことは、今後、求められることへの興味関心を高め、IoTイノベーションの推進や、子どもたちへの教育の充実、市民の豊かな教養の醸成に資するものと考えているところであります。
プロジェクトでは、ここにお越しいただいている、岡﨑乾二郎先生、中谷芙二子さん、中谷宇吉郎記念財団、そして加賀市がタッグを組んで進めてまいります。
それぞれの異なる価値観や、果たせる役割が融合することにより化学反応が起き、加賀市の創造性を感じる発展につながっていくものと思っております。
以上、「かがく宇かん」プロジェクトが、第1歩を踏み出したことを申し上げまして、私からのご挨拶とさせていただきます。
本日は、よろしくお願いいたします。